ITフリーランスとして順調に案件をこなし、収入も安定してきた。しかし、「売上が1,000万円を超えてきて税負担が重い」「大手企業との直接契約を狙いたいが個人では信用面で不安」「チーム開発案件を受けたいが組織化が必要」と感じていませんか?
そんなIT系フリーランスにこそ活用してほしいのが「特定創業支援制度」です。
この制度を活用することで、法人化時の費用を抑えながら、IT事業の成長に必要な経営知識を体系的に身につけることができます。
また法人化についてはこちらの記事も参考にしてみてください。




IT系フリーランスに特定創業支援制度が必要なのか?
IT業界特有の法人化メリット
1. 高額案件への参入機会拡大
大手SIerなどの案件では、直接契約する際に与信やセキュリティ面から法人格を求められる場合があります。
やはり直接契約となる場合が1番のポイントになるかと思います。
2. 消費税負担の最適化
売上1,000万円を超えると消費税課税事業者となりますが、法人化のタイミングを適切に調整することで、最大2年間の消費税免税期間を再度活用できる可能性があります。
ただし、インボイス登録にも影響してきますので、取引先にもよってくるかと思います。
特定創業支援制度の基本構造とIT業界への適用
制度の概要
特定創業支援制度は、産業競争力強化法に基づく創業支援制度で、市区町村が地域の商工会議所、商工会、金融機関などと連携し、創業希望者を包括的にサポートしてくれます。
支援としては4つあります。(IT系での視点では下記の通りです)
- 経営支援:IT事業の戦略立案、プロダクト開発計画
- 財務支援:開発投資計画、キャッシュフロー管理
- 人材育成:技術者採用、チームマネジメント
- 販路開拓:クライアント開拓、パートナーシップ構築
IT系フリーランスが受けられる具体的優遇措置
1. 法人設立費用の大幅削減
- 株式会社設立:登録免許税15万円→7.5万円
- 合同会社設立:登録免許税6万円→3万円
2. 開発資金調達の優遇
- 日本政策金融公庫「新規開業資金」の金利0.2%引き下げ
- 信用保証枠の拡大(無担保1,000万円→1,500万円)
- IT導入補助金等、他の補助金申請時の加点要素
3. 小規模事業者持続化補助金創業型への申請資格
過去3年以内に特定創業支援証明書を取得していることが申請要件となっており、最大50万円の補助金獲得チャンスが得られます。
IT系フリーランス向け支援内容の詳細解説
経営支援:技術を事業に転換する戦略立案
事業モデルの体系化
個人スキルベースの受託開発から、組織としてのサービス提供への転換をサポート。
- 受託開発型:従来の案件受注を組織化し、より大型案件への対応力強化
- プロダクト開発型:自社サービス・アプリの企画・開発・運営戦略
- コンサルティング型:技術コンサルティングサービスの体系化
市場分析と競合戦略
- IT業界トレンドの分析手法(AI、クラウド、DX等)
- ニッチ領域の発掘方法
- 技術的差別化ポイントの明確化
- 価格戦略の最適化
財務支援:IT事業特有の資金管理
開発投資計画の最適化
IT事業では先行投資が重要ですが、適切な投資タイミングと規模の判断をサポート。
- 開発環境・ツール投資の ROI 計算
- クラウドインフラコストの最適化
- 人材投資(採用・教育)のタイミング
- マーケティング投資の効果測定
キャッシュフロー管理
役員報酬の適切な設定により節税効果を最大化しながら、事業成長に必要な資金を確保。
- 月次資金繰り表の作成
- 大型案件受注時の資金管理
- 税務スケジュールに合わせた資金準備
融資・補助金戦略
IT事業に適した資金調達方法を具体的にアドバイス。
例えば、スモールビジネスではなく、スタートアップのように事業を急成長させ加速していきたい場合にベンチャーキャピタルとの接点を構築することも可能になります。
- 日本政策金融公庫の各種制度融資活用法
- IT導入補助金、ものづくり補助金等の申請サポート
- 地域の創業支援融資制度の活用
- ベンチャーキャピタルとの接点構築
人材育成支援:技術者組織の構築
採用戦略の立案
フリーランス時代の人脈を活かした採用から、組織的な人材確保への転換。
- 技術者採用のチャネル構築(エージェント、リファラル等)
- 採用基準とスキル評価制度の設計
- フリーランスとの協業体制構築
組織文化とブランディング
- エンジニア採用に効果的な企業ブランディング
- 技術ブログ・OSS活動による認知度向上
販路開拓支援:IT業界特有の営業戦略
クライアント開拓の体系化
個人の人脈に依存しない、組織的な営業活動の構築。
特にエンジニア出身のフリーランスは、営業を苦手とする方も多いかと思います。
営業戦略を組み立てる上では非常に効果的な支援を受けられます。
- 企業向け直接営業の手法
- パートナー企業との協業体制
- Webマーケティングによるリード獲得
- 業界イベント・展示会の活用
提案力の強化
- RFP対応力の向上
- プレゼンテーション能力向上
- 見積もり・契約交渉術
長期契約・継続案件の獲得
- 保守・運用契約の提案手法
- SLA(Service Level Agreement)の設計
- 顧客満足度向上とリピート率向上
- アップセル・クロスセル戦略
申請から活用までの完全ガイド
Step1:創業を考えている市区町村にて実施状況確認
自治体によって支援内容が異なりますので、まずは創業を考えている市区町村の実施状況や支援内容を確認してください。
また申込や実施時期も異なりますので、予めチェックをして、事前準備しておきましょう。
Step2:事前準備と申込み、支援実施
事前準備すべき情報
支援機関への相談時に準備しておくべき資料は下記の通りです。
全てを必ず準備しておかなければならないことはないですが、あるとスムーズに進められます。
- 現在の事業内容と技術領域
- 直近3年の売上・所得推移
- 法人化の目的と時期
- 想定している事業規模と成長計画
- 強み・差別化ポイント
支援期間中のスケジュール例
申込が完了したら支援を受けられます。一般的な支援期間は1~3ヶ月ほどです。
場所によっては面談、もしくはセミナー形式となっています。
回数は4~8回が目安です。内容は下記を参考にしてみてください。
- 1回目:現状分析と課題整理
- 2回目:事業計画の基本構造検討
- 3回目:財務計画と資金調達戦略
- 4回目:組織化・人材戦略
- 5回目~:販路開拓・マーケティング戦略
Step3:継続支援の効果的活用
支援期間中の成果最大化
限られた支援期間で最大の成果を得るためのコツは下記の通りです。
あくまで自分で計画していくことになりますので、専門家に任せるのではなく、ご自身で気になる点などは質問できるようにしていきましょう。
- 事前の自己分析を徹底的に行う
- 具体的な質問を準備する
- 支援担当者以外の専門家も積極的に活用
- 他の支援制度との組み合わせを検討
地域別IT支援の特色と選択指針
地域によって支援内容や特徴も異なります。
活用ポイントを参考にして創業場所を検討してみるのも良いと思います。
首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)
特徴
- スタートアップエコシステムが最も発達
- VC・エンジェル投資家との接点が豊富
- 最新技術トレンドの情報収集が容易
- 高単価案件・大型プロジェクトが豊富
代表的支援機関
- 東京都産業労働局「TOKYO創業ステーション」
- 横浜市「I・TOP横浜」
- さいたま市産業創造財団
- 千葉市産業振興財団
活用ポイント
国際化支援、AI・IoT等先端技術分野の専門支援も充実。大手企業との協業機会も多い。
関西圏(大阪・京都・兵庫)
特徴
- 製造業との連携によるIoT・DX案件が豊富
- 大学との連携研究機会が多い
- 関西独特のビジネス文化への理解が重要
- コストパフォーマンスの良い事業環境
代表的支援機関
- 大阪産業創造館
- 京都産業21
- ひょうご産業活性化センター
活用ポイント
製造業のデジタル化需要が高く、BtoB向けシステム開発に強み。
地方都市
特徴
- 地域密着型の手厚いサポート
- 地方企業のIT化需要拡大
- 人材採用コストの優位性
- 自治体独自の支援制度が充実
活用ポイント
地方企業の IT 人材不足解決に貢献することで、安定した事業基盤を構築可能。
2025年最新動向とIT業界への影響
特定創業支援制度を活用し、法人化させ、事業拡大する際の事業プランの参考にしてみてください。
政府のデジタル化推進政策
2024年以降、政府は「デジタル田園都市国家構想」を本格化させており、地方企業のDX推進に対する支援が拡充されています。
これにより、IT系法人にとって地方市場での事業機会が大幅に拡大しています。
新しい支援制度の動向
DX推進関連補助金の拡充
特に中小企業では、まだDX関連の整備が整っていないとされています。
- IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠拡大
- 事業再構築補助金におけるDX関連投資の優遇
- 小規模事業者持続化補助金のデジタル化特別枠
スタートアップ支援制度の強化
経済産業省では「スタートアップ創出促進保証制度」を新設し、技術系スタートアップへの資金供給を強化しています。
技術トレンドと創業支援
注目分野
- 生成AI活用サービス
- Web3・ブロックチェーン技術
- サステナビリティ関連tech
- ヘルステック・エドテック
これらの分野では、特定創業支援制度と併せて活用できる専門的な支援制度も充実しています。
まとめ:IT系フリーランスが特定創業支援制度で成功するための戦略
IT系フリーランスにとって、特定創業支援制度は単なる法人設立費用の節約手段ではありません。技術者個人としてのスキルを、持続可能な事業へと発展させるための包括的支援システムです。
成功への5つのステップ
- 現状分析:自分の技術領域と市場ポジションを客観視
- 支援機関選択:IT業界への理解が深い機関を選定
- 計画立案:技術・事業・財務の統合的戦略を構築
- 支援活用:専門家のアドバイスを積極的に活用
- 継続成長:法人化後の成長戦略を実行
今すぐ取るべき行動
- 調査開始:居住地域のIT系創業支援制度を調査
- 相談予約:興味のある支援機関に連絡・相談予約
- 現状整理:事業内容・財務状況・成長目標を明文化
- ネットワーク構築:同業者・専門家との関係性を構築
技術の進歩が加速する現代において、個人の技術力だけでは限界があります。組織としての力を活用し、より大きな価値創造を目指すIT系フリーランスにとって、特定創業支援制度は成功への重要なステップとなります。
費用がかからずにこれだけの支援を受けられ、事業についても相談ができるのは非常にメリットが大きいです。
特に技術に特化してきたエンジニアなら、経営に関わる経験はほとんどないと思いますし、独自で立ち上げて運営していくのはリスクがあります。
もし事業拡大を考えているなら、ぜひ活用してみてください。














