フリーランスとして働く上で、将来の不安を解消しながら効率的に節税や資金繰りしたいと考えている方は、必ず行動してください。
小規模企業共済は、フリーランス・個人事業主にとって最も強力な節税ツールの一つであり、同時に将来の退職金を積み立てることができる制度です。
本記事では、小規模企業共済をフリーランスが必ず活用すべき理由から、節税効果、契約者貸付制度を使った資金調達、そして退職金との組み合わせ方まで、実践的な活用方法を詳しく解説します。
1. 小規模企業共済とは?フリーランス・個人事業主の退職金制度
小規模企業共済制度の基本概要
小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する、フリーランスや個人事業主向けの退職金制度です。廃業や退職後の生活安定資金、事業再建資金をあらかじめ積み立てて準備することができる退職金制度として、多くのフリーランスに活用されています。
フリーランスの加入条件
フリーランスが小規模企業共済に加入するための条件は以下の通りです。
- 雇用関係がなく請負契約・準委任契約等で働いている
- 事業所得で確定申告をしている
- 従業員数20人以下(商業・サービス業は5人以下)
エンジニア、デザイナー、ライター、コンサルタントなど、様々な分野のフリーランスが対象となります。
2. フリーランスが小規模企業共済を活用すべき5つの決定的理由
理由①:最強の節税効果 – 掛金全額が所得控除
小規模企業共済の最大の魅力は、掛金全額が所得控除になることです。
年収別に具体的な節税シミュレーションを作成してみました。
年収500万円のケース
月額3万円(年額36万円)の掛金を支払った場合。
- 所得税率:20%
- 住民税率:10%
- 年間節税額:108,000円(36万円 × 30%)
- 25年間の節税総額:270万円
年収800万円のケース
月額5万円(年額60万円)の掛金を支払った場合。
- 所得税率:23%
- 住民税率:10%
- 年間節税額:198,000円(60万円 × 33%)
- 25年間の節税総額:495万円
年収1,000万円のケース
月額6万円(年額72万円)の掛金を支払った場合。
- 所得税率:33%
- 住民税率:10%
- 年間節税額:309,600円(72万円 × 43%)
- 25年間の節税総額:774万円
年収1,200万円のケース(最大掛金活用)
月額7万円(年額84万円・最大掛金)の掛金を支払った場合。
- 所得税率:33%
- 住民税率:10%
- 年間節税額:361,200円(84万円 × 43%)
- 25年間の節税総額:903万円
所得税は累進課税のため、年収が高いほど節税効果が劇的に増加することがわかります。
特に年収1,000万円を超えるフリーランスにとって、小規模企業共済は必須の節税ツールと言えます。
そのため、最大掛金月額7万円の掛金にする方は非常に多いです。
理由②:将来の退職金を確実に積み立て
サラリーマンと違い、フリーランスには退職金制度がありません。小規模企業共済は、フリーランス自身が経営者の退職金を積み立てることができる貴重な制度です。
受給タイミングは下記の通りです。
- 廃業時:掛金以上の共済金を受給
- 任意解約:納付期間に応じて解約手当金
- 死亡時:遺族に共済金を支給
フリーランスとして活動していても、正社員に戻ったり、法人化する方もいて廃業する人もいるかと思います。
その時は、掛金以上の共済金を受給することができます。
理由③:低金利での資金調達が可能(契約者貸付制度)
小規模企業共済の隠れた大きなメリットが、契約者貸付制度です。これは掛金の範囲内で事業資金を借りることができる制度で、フリーランスにとって心強い資金調達手段となります。
- 一般貸付:年利1.5%(無担保・無保証人)
- 特別貸付:年利0.9%(特別な事情がある場合)
- 借入限度額:掛金合計額の7~9割
- 審査:原則として審査なし
- 返済期間:借入理由により6か月~5年
現在の一般貸付けの利率は年利1.5%という低金利で資金調達ができるため、事業拡大や資金繰り改善に大変有効です。
掛金でかけておき、資金が必要になったら貸付制度で調達するという方法で運用することをおすすめします。
また借り換えも可能ですので、利息分だけ支払い、長期借り入れることも資金繰りの手段の1つです。最終的に掛金と相殺することもできますので、リスクはほぼないと言っても過言ではありません。
理由④:税制上の優遇措置(受給時)
共済金を受け取る際も税制上の優遇があります。
一括受給、分割受給とありますが、僕のおすすめは一括受給です。
理由としては退職所得控除を組み合わせることで節税効果が非常に高いからです。
一括受給の場合
- 退職所得扱い:所得控除後の1/2が課税対象
- 退職所得控除:勤続年数に応じた控除あり
分割受給の場合
- 公的年金等控除の対象
- 年額60万円(65歳未満)または110万円(65歳以上)まで非課税
理由⑤:インフレ対応と元本保証
小規模企業共済は、長期的な資産形成において重要な以下の特徴があります。
- 元本保証:掛金元本は保証される
- 運用益:長期的には掛金以上のリターンが期待できる
- インフレ対応:物価上昇に対する一定の保護機能
ここまで保証される制度はなかなかありません。
フリーランスが資産形成するなら、投資よりもまずは小規模企業共済を始めることです。
3. 効果的な掛金設定と節税戦略
最適な掛金額の決め方
下記は年収・掛金別のシミュレーションです。
年収 | 推奨掛金(月額) | 年間節税効果 | 25年間節税総額 |
---|---|---|---|
300万円 | 1万円~2万円 | 1.8万円~3.6万円 | 45万円~90万円 |
500万円 | 2万円~4万円 | 6万円~12万円 | 150万円~300万円 |
800万円 | 5万円~6万円 | 16.5万円~19.8万円 | 412.5万円~495万円 |
1,000万円 | 6万円~7万円 | 25.9万円~30.2万円 | 647.5万円~755万円 |
1,200万円 | 7万円(上限) | 36.1万円 | 903万円 |
掛金変更のタイミング戦略
小規模企業共済では、年1回掛金額を変更できます。
増額のタイミング
- 年収が増加した年
- 大きな案件を受注した年
- 法人化前の高所得年
減額のタイミング
- 年収が減少した年
- 事業投資で経費が増えた年
- 他の所得控除を多く利用する年
4. 契約者貸付制度の賢い活用法
事業資金調達としての活用
契約者貸付制度は、フリーランスにとって以下の場面で威力を発揮します。
活用シーン例は下記の通りです。
設備投資資金
- パソコンやソフトウェアの購入
- 作業環境の整備
- 専門機器の導入
運転資金
- 案件の前払い費用
- 外注費の一時立替
- 税金の分割納付資金
事業拡大資金
- 広告宣伝費
- 新規事業の初期投資
- 人員確保のための資金
借入手続きの流れ
借り入れする際の手続きは、登録した金融機関にお問い合わせしてください。
申込から融資まで
- 申込:取扱窓口(銀行、信金等)
- 審査:原則なし(形式的確認のみ)
- 着金までの期間:〜2週間ぐらい
5. 退職金と組み合わせた最適な受給戦略
受給方法の選択肢と税務上の違い
小規模企業共済の共済金受給には3つの方法があります。
①一括受給
- メリット:退職所得控除により大幅な節税
- 適用シーン:完全廃業時、法人化時
②分割受給(年金型)
- メリット:公的年金等控除により毎年一定額非課税
- 適用シーン:段階的廃業、老後の生活資金として
③一括+分割の併用
- メリット:両方の控除を最大限活用
- 適用シーン:最も税制上有利な受給方法
法人化との連携戦略
フリーランスだと売上も増えて法人化を検討する事業者も出てきます。
パターン①:個人事業廃止で一括受給
- 退職所得控除を活用した節税
- 法人の初期資金として活用
パターン②:加入資格変更で継続
- 個人事業主から法人役員への変更
- 掛金を継続して更なる積み立て
状況次第ではありますが、パターン①は掛金を元に資金を活用する場合で、特に直近で活用する見込みがない場合はパターン②でも良いかと思います。
6. 実際の加入手続きと注意点
加入手続きの具体的ステップ
手続き場所
- 商工会・商工会議所
- 金融機関(銀行、信用金庫等)
- 税理士・会計士事務所(代理店登録されている場合)
手続き場所は上記の通りです。
顧問税理士がいる場合は一度相談してみてください。
商工会・商工会議所がどんな場所なのかはこちらの記事を参考にしてみてください。
活用できる制度も結構ありますので、一度足を運んでみるのもいいと思います。

加入前に確認すべき注意点
- 20年未満の解約は元本割れリスク
- 掛金変更は年1回のみ
元本割れのリスクは、解約する前に貸付制度を利用することでまとまった資金を作ることができるため、大きなリスクにはならないかと思います。
一番は掛金を何度も変更できないことです。
お金の管理をしっかりできていないフリーランスだと、損をする可能性は高いので、あらかじめ年間の収支を予測して掛金を決めましょう。
7. よくある質問と疑問解決
Q: iDeCoとの併用は可能?
A: はい、可能です。両制度とも小規模企業共済等掛金控除の対象となり、合計で最大限度額まで所得控除を受けられます。
ただし、iDeCoは60歳まで解約はできません。併用する場合は資金に影響ない金額にしましょう。
Q: 法人化後も継続できる?
A: 従業員20人以下の法人役員であれば継続可能です。個人事業主から法人役員への加入資格変更手続きが必要になります。
Q: 途中で事業を休止した場合は?
A: 掛金の支払いを停止することは可能ですが、解約すると元本割れのリスクがあります。契約者貸付制度を活用して資金繰りを調整することをおすすめします。
まとめ:フリーランスにとって小規模企業共済は必須の制度
小規模企業共済は、フリーランス・個人事業主にとって以下の4つの大きな価値を提供します:
- 強力な節税効果:掛金全額所得控除による税負担軽減
- 将来の安心:退職金制度による老後資金の確保
- 資金調達手段:低金利での事業資金借入れ
- 柔軟な受給方法:税制優遇を活かした効率的な資産活用
特に年収300万円以上のフリーランスであれば、加入によるメリットがデメリットを大きく上回ります。将来の不安を解消し、現在の税負担を軽減しながら、事業の発展を支援する小規模企業共済を、ぜひ積極的に活用してください。
まずは中小機構の公式サイトでシミュレーションを行い、あなたに最適な掛金額を確認することから始めてみましょう。フリーランスとしての充実したキャリアと安定した将来を築くために、小規模企業共済は欠かせないパートナーとなるはずです。