フリーランスとして働く人にとって、報酬の未払い問題は深刻な課題となっています。
他人事ではなく報酬の未払いで問題になっているケースは少なくありません。
本来、正当に報酬を受け取る権利がある方にとっては、報酬が支払われないということは非常に辛い状況です。
これまで会社員で勤めてきた方にとっては、考えられない出来事かもしれませんが、実態としては、報酬が支払われないことは少なくありません。
場合によっては、泣き寝入りすることもあると思います。
可能な限り、未然に防げるように対策を講じたり、未払いになったときにどのように対応すべきか事前に整備しておきましょう。
この記事では、事前の対策方法、実際に未払いになった時の対応についてまとめていきます。
事前に行うべき対策
フリーランスとして報酬の未払いを防ぐためには、事前に行うべき対策がいくつかあります。
契約書の取り交わし
まず、最も基本的なステップとして契約書の取り交わしがあります。
契約書の重要性については、みなさんご存知の通りではありますが、どうしてもフリーランスとして活動して仕事を請け負う中には、報酬額が少ないものもあるかと思います。
報酬額が少ないと、お互いに契約書を取り交わすことを煩わしくなってしまうことも多々あり、口約束で記録も何も残らず仕事を進めていくこともあります。
少なくとも、継続性のある仕事の場合や少額でない場合は必ず契約書の取り交わしを行いましょう。
では、契約書はどのように作成すべきかですが、2024年11月に施行されたフリーランス新法は、発注者側が契約書や発注書に取引条件を明確に記載する義務を負うため、基本的には発注者側が作成するケースが多いかと思います。
ただし、どちらかが作るかは決まっていませんので、受注者側のフリーランスが作成するケースもあります。
そのため、どんなことを最低限抑えておくか、理解しておく必要はあります。
契約書には、業務の内容や報酬の支払い条件を明確に記載しておくことが欠かせません。
具体的には、作業範囲、納期、そして報酬の支払期日をしっかりと定義し、双方の合意を文書化することが求められます。
さらに、納品物の確認がスムーズに行われるよう、クライアントとの絶え間ない意思疎通が重要です。
定期的に作業の進捗を報告し、承認を得ることで、お互いの信頼関係を築くことができます。
また、事前に作成した契約書や合意内容をもとに、問題が発生した際にはすぐにそれに立ち返り、対処を行うことが可能となります。
このように、報酬未払いを防ぐには、契約書の作成とクライアントとの円滑なコミュニケーションが肝要です。
与信調査(信用調査)
与信調査はご存知でしょうか。
与信調査で有名な会社には、「帝国データバンク」や「東京商工リサーチ」などが挙げられます。
一般的に企業は取引先相手がトラブルを未然に防ぐためにリスク管理として与信調査を行い、口座を開設する流れとなります。
具体的にどのような調査を行うかというと、下記のような項目を調査しています。
- 企業の資本金、売上高、利益、負債などの財務情報
- 企業の業績、市場シェア、競合状況など
- 企業の評判や口コミ、過去の取引実績など
- 反社会的勢力との関係がないか
企業側からすれば、フリーランスに対しての与信調査は難しいところもありますが、一定の調査を行っている企業もあります。
内容としては、代表者の経歴や資産状況、インターネットによる評判、反社会的勢力との関係などを調べることが多いかと思います。
ではフリーランスはどのように与信調査をすればよいのでしょうか。
先ほど名前を挙げた「帝国データバンク」や「東京商工リサーチ」を利用して調査するのでも良いのですが、おすすめは「G-Search」です。
理由は下記の通りです。
- 帝国データバンク等の専門調査会社複数のデータベースを一括で調査可能
- 1社あたりの情報は従量制となるため変わらないが、月額料金や入会金がかなり抑えられる
- 個人であれば、月会費数百円程度
経費はかかりますが、情報を手に入れることに対しての必要経費です。
費用もそこまで大きくかかるわけではないので、勿体無いと思わずに、事業としてリスク管理はしっかりと行うべきです。
また、マーケティングや市場調査を行うときにも活用できます。
これまで信用を何で見るかの判断として、感覚で見ていた部分もあるかと思いますが、しっかりと客観的な情報や数字を見て判断することを考えてみるためにも、個人的には活用すべきサービスです。
弁護士保険の加入
契約書を取り交わしたり、与信調査をしたとしても未払いを完全に防げるわけではないので、事後のことも考えておく必要があります。
ただ問題が発生したときに弁護士に相談することが多いと思いますが、未払いを回収する以上の費用がかかることもあり、結局何もできず、泣き寝入りすることになってしまいます。
そういった場合に、弁護士費用を保険でカバーするという方法があります。
弁護士保険を活用するには、未払いが発覚した事後に保険に加入しても基本的には負担してくれません。
あらかじめ、事前に加入し、待機期間という一般的に3ヶ月ほどの期間を満たしておく必要があります。
弁護士保険も数多くありますが、おすすめは「フリーランス協会」の一般会員になることです。
年会費1万円で数多くの特典を受けられるのですが、その中に弁護士費用保険(フリーガル)が自動で加入されます。
フリーランスとして活動する上で重要な情報や特典が多いので、ぜひ検討してみてください。
支払いされなかった場合の対応
支払いが滞った場合の初期対応
フリーランスとして活動する中で、報酬の未払い問題というリスクは避けることができません。適切な対策を講じておくことは重要です。
ここでは、特に支払いが滞った場合の初期対応について解説いたします。
まず、支払いが遅れていることを確認した時点で、すぐに取引先に連絡を取りましょう。
これまでのやり取りを含め、メールなど、すべてのやり取りを記録して残しておきましょう。
感情的にならず、具体的な支払い期日を再確認し、理由をしっかりとヒアリングする必要があります。
一過性なのか、今後も未払いが続きそうかどうか、引き続き業務を継続するかどうかの判断もする必要があります。
取引先と連絡がつかないもしくは未払いが解消されない場合は、専門家への助言が必要となります。
報酬未払い問題は、迅速かつ冷静な対応が求められる状況です。
時間をかけすぎず見込みがない場合は、すぐに専門家へ相談し、法的措置を検討していきましょう。
弁護士保険に加入している場合は、加入先にまずは連絡してみましょう。
法的措置の検討
取引先と連絡がつかなかったり、減額された場合などで、対応に困った場合は法的措置を検討していきましょう。
弁護士保険に加入している場合は、加入先に連絡することで話が進んでいきますが、もし保険に入っていない場合は、「フリーランス・トラブル110番」というサイトから問い合わせすることをおすすめします。相談料は無料です。
弁護士に相談することで、適切なアドバイスを受けることができます。
保険に入っていない場合は、未払い請求額が弁護士報酬より低いと請求しても損をしてしまう可能性はあります。
自己で判断せずに費用についても弁護士に相談し、早急に対応を進めていきましょう。
公正取引委員会への相談・申告
他のフリーランスや今後被害が大きくならないためにも、各地域の労働局や労働基準監督署、公正取引委員会に相談することも視野に入れるべきです。
これらの機関はフリーランスを含むすべての働く人々の権利を守るために設置されています。
報酬未払いの問題について相談することで、実際にどのような手続きがあるか、どのように進めれば良いのかを具体的に指導してもらえるでしょう。
フリーランス法について公正取引委員会の特設サイトがありますので、そちらを参考にして対象かどうか確認いただき、右上の「フリーランス法の違反申出窓口」から相談してみてください。
まとめ
昨今ではフリーランス新法により、フリーランスが安全に安心して事業が行えるように法整備されてきてはいます。
とはいえ、報酬の未払いが完全に無くなるわけではなく、自身でリスク管理は行うべきです。
どうしても、手続きや請求関係、入金管理など意識が低くなってしまうことから、対応が遅くなってしまうことが多いです。
今一度、業務以外のバックオフィス業務を見直し、安全に事業が行えるように整備してみてはいかがでしょうか。